マイシッポコラム-愛犬旅を充実させる情報集-

【獣医師執筆】
愛犬が宿泊先で快適に過ごせるように

非日常を楽しむのが旅の醍醐味ですが、未知のことばかりの連続だとわんちゃんはストレスに感じてしまうかもしれません。

いつも通りだけど、ちょっと特別

宿泊先での過ごし方は、「いつも通りだけど、ちょっと特別」そんな過ごし方を目標にされるといいのではないでしょうか。
居住スペースは慣れたケージやクレート、食事は食べ慣れたもの、生活リズムはできるだけ普段通り、と、わんちゃんが戸惑わない生活を維持してあげてください。
また、常日頃から、わんちゃんにいろいろなことを体験させて「世の中にはいろいろなものがあるんだよ」と教えてあげてください、そうした積み重ねで許容できることを増やしておくと宿泊先での過ごし方の選択肢も増えることでしょう。

自動車に乗れるように

移動できないことには、旅は始まりません。車に乗ることを断固拒否するような場合は、訓練士さんに相談することをお勧めします。また、喜んで乗車するがすぐに酔ってしまって嘔吐してしまうといった場合は、かかりつけ獣医師に相談してください。
「そうまでして旅行に行かなくてもいいわ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、わんちゃんが抵抗なく自動車に乗れることは、緊急時にも役立つことですので、旅行を『抵抗なく自動車に乗れるようにする』、『酔い止めなどの対策も準備しておく』といったことのきっかけととらえてください。

ケージやクレートでリラックスして過ごせるように

自動車での移動中や、宿泊先での就寝時と、旅ではケージやクレートで過ごす時間が増えます。旅行の時だけ、ケージやクレートで過ごせと言われてもわんちゃんは戸惑ってしまいますので、普段の生活でもケージやクレートを安心して過ごせる場所として設置していただければと思います。ケージやクレートは愛犬の体格に合ったサイズ、素材や、デザイン(格子の間隔や開いてる穴の位置や大きさ等々、わんちゃんがひっかかるところが無いかなど要チェック)などにも注意して選びましょう。

散歩コースはバリエーションを持たせる

いろいろなコースを散歩することで、わんちゃんに世の中にはいろいろなものがあることを教えてあげてください。お散歩コースがいつものコース以外にあまりない場合は、逆回りに回る、時間帯をずらすなど、変化をつけるのもひとつの方法です。
お散歩に出かけた際のわんちゃんの様子をよく見てください。どんな傾向がありますか、臭いを頻繁に嗅ぎたがるか、よそのわんちゃんに対して友好的なのか逃げ腰なのか、他の人に対して興味を持って寄って行って行きがちなのか、吠え付くのか、人にも犬にも我関せずなのか。その傾向は、ご家族の誰が散歩に連れて行ったかで変わるのか、変わらないのかということをご家族で情報共有してください。わんちゃんの傾向を把握することで、旅先でもさせてあげたいこと、旅先では避けた方が無難なことが見えてきます。
(お散歩の際、人や犬にいつも吠え付く、少しでも違うコースを進もうとしただけで全く動かなくなる、といった飼い主さんが『あれ?』と感じることがあったら、かかりつけ獣医師や訓練士さんに相談することをお勧めします)

安全のためにいくつかの指示を教えておく

屋外では、ドッグランなどのオフリードで走り回れる対策を講じている場所以外では、リードは絶対に手放さないでください。
万が一、リードが外れる・切れる等のアクシデントがあった場合の対策として、『おいで』と『まて』を教えておいていただきたいと思います。『おいで』は飼い主さんのところへ戻って来いの指示です。『まて』はその場にとどまれの指示です。車が通るような道路を渡ってしまった場合、飼い主さんが迎えに行くまでその場で待せるといったときに使う指示になります。

宿泊先での過ごし方とはかけ離れた話が続いたように思われたかもしれませんが、普段の生活で、『移動に慣らす』、『ケージやクレートで過ごすことに慣らす』、『家の外での行動、他の犬や人等に対する反応を把握する』、『指示を教える』、これらのことはわんちゃんの旅の質を上げることに繋がります。『旅を楽しく過ごそう!』をモチベーションに、常に心がけていただければと思います。

宿泊先で快適に過ごすためには、わんちゃんの性格や嗜好、体力、それまでの経験値などを総合的に考慮して決めることがポイントになります。
アクテビティは、いつもとはちょっと違うにおいや風を感じる、草の上を散歩する、広いドッグランで思いっきり走り回るなど、わんちゃんを一番よく知っている飼い主さんが工夫をしていただければと思います。飼い主さんがわんちゃんと楽しもうとあれこれ計画しても、受け入れられず結局飼い主さんがわんちゃんをずーっと抱っこして終わることもあるかもしれません。それも旅の醍醐味ではないでしょうか。

執筆者プロフィール

田邊 弘子
獣医師(DVM MS)、日本ヒューマン・ドッグウォーキング協会理事

一般企業から動物病院、ドッグフードの通信販売会社勤務を経て、犬の飼育についての理解を深めることを目的とした飼い主向け情報誌の製作などを行う。
<人と暮らす犬が幸せになれるように><犬と暮らす人が幸せになれるように>をモットーに、多くの飼い主へ情報を発信している。
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