マイシッポコラム-愛犬旅を充実させる情報集-

【獣医師執筆】
楽しい旅行のために病気やケガに備える

せっかくの旅行、わんちゃんにも楽しく過ごしてもらいたいですよね。そのためには、まず第一にわんちゃんが旅先で体調不良を起こしたりケガをしたりしてしまうことは可能な限り避けたいです。
飼い主さんが出来る対策として、ルーチンの各種予防と、旅行中の注意すべき事柄をいくつかご説明します。

ルーチンの予防は抜かりなく

わんちゃんを連れて旅行に行く際は、わんちゃんのルーチンのワクチンや各種予防のスケジュールを考慮して旅行の手配をしましょう。ワクチン接種が旅の直前直後にならないように、ワクチンの接種予定日の前後1か月は旅行の予定は避けることをお勧めします。ノミ・ダニの予防薬も旅の1週間前くらいまでには済ませておきましょう。シャンプーが必要な場合は、各種予防との間隔を調整して、早めに済ませるよう計画しましょう。フィラリアの予防薬の投与日が旅行期間中に被っている場合は、ご自宅で落ち着いた環境で投与した方がよいと考えますので、旅行の前後にずらすことをお勧めします。
ワクチンやノミ・ダニ予防薬、フィラリアの予防薬といった、わんちゃんのルーチンの各種予防について日程をどう調整したらいいかは、ワクチンや予防薬の特性を理解していないとなかなか難しいと思いますので、飼い主さんご自身があれこれ悩むよりかかりつけ獣医師に早め(数か月前)に相談して日程の調整を始めることをお勧めします。

旅の間に気を付けたいこと

些細な不注意がわんちゃんのケガや体調不良の原因になる場合があります。以下のようなことを注意していただけたらと思います。

・安易に人の食べ物を与えない
例えば、サービスエリアや道の駅によく売っているソフトクリーム。冷たくて脂質が多く含まれているので、わんちゃんが食べると下痢や軟便を引き起こす可能性があります。焼き鳥やソーセージなどもわんちゃんには塩分が強かったり脂質が多かったりしますので、これらもわんちゃんには不向きな食品です。
そうは言ってもせっかく旅行に来たんだから、と思う飼い主さんのお気持ちはわかりますが、そこはしっかりけじめをつけて、人の食べ物をわんちゃんに与えることは厳に控えましょう。
・リードはしっかり握って
ケージから出たとき、お部屋からでたときは必ずリードをつけ、そのリードは飼い主さんがしっかり握っていてください。『この子は私のそばから離れないの』と思っているわんちゃんでも、知らない土地では例えば大きな音(雷や自動車のバースト音)に驚いて、逸走してしまうということがあります。『待て』の指示を出す間もなく飛び出して交通事故にあう危険性もありますので、リードは必ずしっかり握っていてください。
・宿泊先での荷物の管理
飲食物の他に化粧品(美容クリームなど)、靴下・下着類を盗食・誤飲してしまうわんちゃんがいます。なぜそのようなことをしてしまうのか、空腹だったり、好奇心からだったりと理由はいろいろあります。が、まずはわんちゃんに盗食・誤飲をさせないため、飼い主さんがお部屋で心置きなくのんびりできるためにも、わんちゃんの口の届く範囲にはものを置かないようにしてください。

宿泊地や移動ルート周辺の動物病院をチェック

予防をしっかり行って、事故が起きないように十分注意していても、急病やケガは起きるときは起きてしまいます。
万が一の急病やケガの場合に備えて、宿泊先の最寄りだけでなく往復のルートの主だった地点数ヵ所の動物病院の所在地とその診療時間や休診日、夜間診療を行っているかなども含めてチェックしておきましょう。
カーナビやスマホですぐに検索できる時代ですが、事前に調べておくことで、飼い主さんご自身が『わんちゃんの急病やケガの場合、受診にはこれくらいの移動が必要になる』と把握できますので、冷静な対応ができるかと思います。
その他、「24時間電話で獣医師に相談できるサービス」といったものもいくつかあるようですので、事前に調べて有用であると判断されたら契約等しておくのも、万が一の備えになるかと思います。相談できる内容として、「応急処置の指示を仰げるのか」、「様子を見ていいかどうか判断してもらえるのか」などを確認しておくといいでしょう。

健康で、病気・ケガの無い旅行のために

ルーチンの予防はわんちゃんに負担なくかつその効果が十分出るように旅行とのスケジュールを調整する、細かいことに注意を払い出来る限り事故を防ぐ、万が一に備え、動物病院のチェックをしておく、といった可能な準備をすることでリスクを少しでも減らして楽しく安全なわんちゃんのとの旅を楽しんでください。

執筆者プロフィール

田邊 弘子
獣医師(DVM MS)、日本ヒューマン・ドッグウォーキング協会理事

一般企業から動物病院、ドッグフードの通信販売会社勤務を経て、犬の飼育についての理解を深めることを目的とした飼い主向け情報誌の製作などを行う。
<人と暮らす犬が幸せになれるように><犬と暮らす人が幸せになれるように>をモットーに、多くの飼い主へ情報を発信している。
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