【ドッグ・トレーナー監修】
愛犬旅行デビュー、快適で安全にするための注意点と持ち物
憧れの愛犬との旅行。山? 海? それとも温泉地? どこへ行こうかと考えるだけでもワクワクしますよね。
しかし、何事も準備が肝心。旅をより楽しく、快適で、安全にするために知っておきたい注意点や持ち物をご紹介しましょう。
旅行を決める前に愛犬の状態をチェックしよう
愛犬を連れて旅行に行きたいと思った時には、事前に確認しておきたいことがあります。
- ❶ 愛犬の健康状態は?
- 食欲やお腹の調子、皮膚など異常がないか愛犬の健康状態を確認しましょう。
- ❷ 狂犬病予防注射や感染症予防のワクチンは接種してある?
- 旅行には病気感染リスクも伴うため、各種ワクチン接種済であることが望ましいです。
また、多くの場合、予防接種済であることが宿泊や施設利用の条件にもなっているので、追加接種日を過ぎていないか確認を忘れずに。
- ❸ ノミ・ダニ予防はしてある?
- 旅先には自然豊かな場所もあります。ノミ・ダニは瓜実条虫やバベシア症のような病気につながることがあるので、予防はしておきましょう。
- ❹ しつけはどの程度できている?
- 少なくともトイレトレーニングが完了している必要があり、指示よって排泄できるようなら理想的です。また、クレートトレーニングもできていればなお理想的。併せて、無駄吠えの心配はないか、他犬に攻撃的にならないかなども考慮してください。
- ❺ 愛犬の性格や癖など把握できている?
- 愛犬のことをよく理解できていないとコントロールも難しくなります。日頃から愛犬の性格や癖、好きなもの、苦手なものなど把握しておきましょう。
旅行の行き先を決めよう
前出のようなチェックをした上で、十分愛犬を旅行に連れて行けるとなったら次は行き先です。
移動距離は?
◉ 移動時間が2時間以内程度の距離
◉ 途中、少なくとも1時間に1回は休憩できる場所があること
以上の2点が愛犬との初旅行のおすすめ条件と言えます。
旅行の移動手段は?
- ❶ マイカー
-
旅行が初めての愛犬にとっては、より安心できる、愛犬の様子に合わせて休憩もとりやすいという意味において、やはりマイカーでの移動がおすすめです。
もちろん、旅行に行く以前に愛犬が車に慣れていることが大前提です。運転者の膝に乗せる行為や犬が窓から顔を出す行為は道交法違反に問われる場合もあります(※1)。車に乗せる際は、事故防止のためにもクレートや犬用シートベルト、ドライブボックスなどを使用し、愛犬を“固定”するようにしましょう。
車内でフリーにさせる、同乗者が膝に抱くなどは、万一の時に犬が致命的な衝撃を受け兼ねないのでおすすめできません。
- また、事前に目的地までの間で休憩できる場所をリストアップしておくことも忘れずに。
- ❷ 電車
- 鉄道会社それぞれにペットを乗せる場合の条件が定められているので、必ず確認してください。
たとえば、料金、ペットを入れるケースの寸法、重さ、ペットのサイズ、ペットカート利用の可否など。基本的にスリングやトートバッグのように犬が顔を出せるものは不可と考えたほうがいいでしょう。
- 要は、普段からトイレや無駄吠えのしつけができているのに加え、クレートやキャリーバッグ、および電車での移動にも慣れていることが旅行の前提となります。
宿選びのポイント
さて、肝心な宿選びですが、できるだけ快適に過ごせるよう、次のようなポイントをチェックしてみてください。
- ❶ 宿のルールを確認
- 宿ごとに利用できる犬のサイズや頭数、クレート利用の有無、施設内の利用方法などルールが定められているので、愛犬がそれに合致するか確認を。
宿内ではクレートに入れる必要があるなら、それに慣れていない犬は無理かもしれません。ソファやベッドに乗せてはいけないとなると、普段ベッドで一緒に寝ている犬は要注意です。
- また、レストランに犬を同伴できず、部屋で待たせなければいけない場合は、愛犬が飼い主さんと離れることに慣れていなければ難しいでしょう。それらルールを守れるかどうかご一考ください。
- ❷ 宿の部屋や設備を確認
- たとえば、穴を掘る癖のある犬では畳敷きの部屋は避けたほうが無難です。
神経質で他の人や犬を気にする犬の場合は、館内図を確認でき、かつ部屋を指定することが可能ならば、階段やエレベーター、ドッグランの近くではない部屋を予約するという考え方もあります。
- 要は、なるべく愛犬の条件に合った宿と部屋をチョイスしたいということ。その他、犬連れ用の設備や備品が揃っている宿も多いので、何があるのかも確認しておきましょう。
- ❸ 他の犬との距離感を考える
- 宿に看板犬がいるのか、その犬はいつもフリーでいるのか、他の宿泊客の犬たちはどう過ごしているのかなどリサーチしておきましょう。
愛犬が他の犬とフレンドリーに接することができるのならいいのですが、他の犬には神経質になったり、興奮したりするような場合は、犬同士が接触しやすい宿ではストレスになるでしょう。
- 仮に、レストランに犬を同伴できてもテーブル同士の間隔が狭いと、他の犬が気になって落ち着かないかもしれません。そういう犬にはレストランの配置もゆったりしていて、犬同士の距離感が保てる宿のほうが向いています。
- ❹ 宿の衛生管理をリサーチ
- 犬連れ向きであっても宿が不衛生であるといただけません。病気の感染予防からも清潔感のある宿かリサーチしておきましょう。
- ❺ 宿周辺にあるスポットをリサーチ
- せっかく旅行に行っても宿の周辺に犬に優しい場所が何もないとなると行動範囲も狭くなってしまいます。以下のようなスポットはリサーチしておくといいでしょう。
- ◉ 公園、ドッグラン、散歩コースなど犬が遊べたり、落ち着けたりする場所
- ◉ 犬にフレンドリーなお店や施設、観光スポット
- ◉ 動物病院
持ち物を準備する
当然ですが、愛犬との旅は愛犬用の荷物が増えることになります。必須のもの、万一に備えたもの、その他必要に応じて用意するものなどリスト化し、忘れ物がないようにしましょう。
その他注意すべき点
特に初めての犬との旅となると、やはり気をつけたいことがあります。
季節や気温
暑さが苦手な犬にとっては春~初秋にかけて熱中症が心配されます。特に小型犬や短頭種、北方犬種、シニア犬などは要注意です。
季節や気温などにも配慮して旅行や行き先を決めましょう。
出発前と帰宅後に心掛けるべきこと
出発前
- ✔ 愛犬の体調を整える
- 普段とは違うものを与えてお腹を壊したりなどしないよう注意してください。
- ✔ ブラッシングやシャンプーをして清潔を維持
- 被毛が汚れている、換毛期の抜け毛がそのまま浮いているなどは宿にも嫌がられてしまいます。
帰宅後
- ✔ ノミやダニ、汚れ、傷などないかチェック
- ノミやダニがついていた場合はすぐに駆除を。
- ✔ 愛犬の健康状態を観察
- 旅行は意外に疲れるもの。数日は愛犬に何か変化がないか観察するようにしましょう。
起こり得る粗相やトラブル
初めてに限らず、旅行では犬が慣れない環境にストレスを感じたり、体調を崩したりすることがある他、思いもかけないトラブルが起こることもあるのでお気をつけください。
- ❶ ケガ・事故
- 意外に多いのがパッドのケガです。その他、骨折や虫刺されなども。自然豊かな場所ではハチやヘビにも注意が必要です。
- ❷ 嘔吐・下痢
- ストレスから嘔吐・下痢になることもあれば、食べ慣れないものを口にして下痢をすることもあります。
- ❸ 熱中症
- 暑い時期、犬だけを車内に残すことはNGです。息が荒い、よだれが多い、体温が高いなど熱中症の症状が見られた時には、犬の体を冷やし、急ぎ動物病院へ行きましょう。
- ❹ 破損・破壊
- 犬が宿の備品や設備を壊してしまうこともあり得ます。犬だけを部屋に残す時には、クレートに入れる、飽きないよう知育玩具を置いておくなど配慮をお忘れなく。
- ❺ 迷子・脱走
- ドッグランのように囲われた場所以外で犬を放すのは迷子や脱走のリスクが伴う上、ほとんどの場合、法律・条令違反となります(※2,※3)。
宿の室内においても脱走防止のためにドアの開閉時は愛犬をリードにつなぐ、体を確保するなどしてからにしたいものです。
- また、車を降りる時にも勝手に降りないよう、“マテ”をかけてから降ろす習慣をつけておくといいでしょう。
- ❻ 粗相
- 慣れない環境ではしつけが崩れることもあります。特にクッションや絨毯、バスマットなどの軟らかいもの、他の犬の尿臭が残っている場所はおしっこしやすいので注意を。
愛犬の旅ストレスに関する記事はこちら »
旅行には向かない犬
残念ながら愛犬を旅行に連れて行くのは控えたほうがよいというケースもあります。
無理は愛犬のためになりませんし、トラブルのリスクも高くなります。一緒に連れて行けるかどうか熟考の末ご判断ください。
犬連れ旅行は控えたい犬のケース
- ◉ 社会化不足の犬
- 怖がりであったり、警戒心が強すぎたりしてストレスを受けやすい
- ◉ 持病があってストレスをかけたくない犬
- 病気の悪化が懸念される
- ◉ 中期・後期の高齢犬
- 前期にあたるまだ元気なシニア犬であっても注意は必要
- ◉ 家に来て日が浅い犬
- 飼い主さんとの関係性がまだ築けていない
- ◉ 幼犬
- 病気感染のリスクがあり、しつけも不十分
- ◉ 発情中、妊娠中、出産直後のメス犬
- 周囲のオス犬への影響の他、病気感染のリスクも
- ◉ 攻撃的な犬
- トラブルを起こしやすい
- ◉ 他の犬に感染する可能性のある病気に罹っている犬
- 旅行は病気が治ってからに
監修者プロフィール
三井翔平(正平)
スタディ・ドッグ・スクール®所属ドッグ・トレーナー、学術博士
麻布大学大学院獣医学研究科博士後期課程にて、犬と人のコミュニケーションにおける内分泌について研究を行い、博士号を取得。2016年には、世界的なドッグ・トレーナーの資格である CPDT-KA(Certified Professional Dog Trainer - Knowledge Assessed)を取得している。飼い主へのしつけ指導はもちろん、自治体主催のセミナーや専門学校の講師、テレビ番組出演、専門書での執筆など多方面で活躍中。
スタディ・ドッグ・スクール®
執筆者プロフィール
大塚良重
犬もの文筆家、ドッグ・ライター
犬の専門雑誌や書籍、Web、新聞、企業誌などで執筆を続けて30年近い。テレビ番組の制作協力やラジオ番組出演なども。もっとも興味のあるテーマは、「人と犬との関係」「ペットロス」「老犬介護」。自著に難病をもった少女と愛犬の関係を描いた「りーたんといつも一緒に」(光文社)がある。信条は、「犬こそソウルメイト」。この道へと導いてくれた愛犬を一筋に想う一犬好きである。