マイシッポコラム-愛犬旅を充実させる情報集-

【獣医師執筆】
クレートやゲージの重要性と注意点

わんちゃんを飼育するにあたり、クレートやケージを飼い主の皆様は活用されていますでしょうか? クレートやケージは使わなくても、わんちゃんの飼育には支障の無いように思えますが、これらを上手に飼育に取り入れるとわんちゃんの安全・安心とQOLの向上につながります。

クレートとケージって何?

さて、本題に入る前に、クレートとケージについて確認しましょう。
クレートという単語はcrate=『梱包用の木枠』という意味で、わんちゃん用品でクレートと言った場合は、わんちゃんの移動に用いる箱状のものを指すようです。広義ではキャリーケース全般を指す場合もあるようです。
ケージはcage=『鳥かご、檻』という意味で、格子で四方と上下を囲われたものを指します。因みにサークルは上の開いているものをさします。
クレートもケージも形状を示す程度の言葉であって、その用途が厳密に区別されているわけではありません。大事なのはわんちゃんの安全・安心やQOLの向上のために上手にそれらを利用することです。

クレートやケージを上手に使う

おうちの中の決まった場所に置くことでわんちゃんが安心できる居場所になります。
飼い主さんの就寝中や外出中にケージに入っていてもらえば、わんちゃんは家の中の危険なもの、例えば電気コード、観葉植物、ガステーブルのスイッチ(わんちゃんが立ち上がった際ガステーブルのスイッチを誤って押すことで着火してしまうモフモフプッシュという言葉をお聞きになったことありますよね)等々から隔離され安全に過ごすことができます。
クレートのように通気のための程度にしか穴が開いていないものに囲われていると、わんちゃんは外敵に晒されている緊張感から解放されます。
条件を守れば、クレートに入れることで電車などの公共交通機関にわんちゃんと一緒に乗ることができます。

万が一の場合があります

常日頃から、クレートやケージで過ごすことに慣らしておくことはとても重要なことです。なぜなら、好むと好まざるとに関わらず、わんちゃんがクレートやケージで過ごさなければならない場合があるからです。

・入院
病気やケガで入院が必要なとき、ケージでの生活に慣れていないとその分ストレスが増えてしまいます。ケージで過ごすことにあまりにも嫌悪が激しいと治療に支障をきたす場合も考えられます。
・預り
お身内に御不幸があったなど、どうしてもわんちゃんを預けなければならない場合があります。ペットホテル等の専門業者さんの手配がつかず、お友達などに預かってもらう場合は、普段使っているケージ等をつけてあげないと預かる方が見つからない場合があるかと思います。
・災害時
行避難ができる避難所でも、ペットたちは飼い主さんとは別の場所でケージで過ごします。避難期間が長くなって来ると、飼い主さんと一緒に過ごせるよう調整されることもあるようですが、基本的にわんちゃんはケージで過ごすことになると頭に置いておかれた方がいいでしょう。

クレートやケージで過ごせるように

まず第一に気を付けていただきたいのは、わんちゃんがクレートやケージを嫌いになるようなことは絶対にしないでください。

・無理やり押し込む
初めてでもなんの問題も無く入ってくれるわんちゃんもいますが、警戒心が強いわんちゃんの場合、なかなか入ってくれないかもしれません。そのような場合は、無理やり押し込んだりしないでください。まずは徐々に慣らす訓練をしましょう。
・お仕置きの道具として使う
「悪いことしたらケージだよ」と脅かしの道具にすることは絶対にしないでください。クレートやケージはわんちゃんにとって安心できる場所になるように、飼い主さんは常に気を付けていただければと思います。
・サイズが合っていない
クレートやケージをどういう目的(移動のため、室内で安全に過ごすため等々)で使うかによって、ゆとりをどれくらいにするかは変わって来ますが、どの用途でも少なくともわんちゃんが自由に姿勢を変えられるゆとりは必要です。移動用にクレートを使う場合、中でわんちゃんが動くとバランスが崩れて実際以上に重く感じて運びづらくなる場合があります。そのような場合、ゆとりを減らしてぴったりしたものを選ぶのではなく、カートに乗せるなど中でわんちゃんが動いてもバランスが崩れない工夫をしていただけたらと思います。
・素材が合わない
素材に関しては、寒い季節に通気性の良いもの、暑い季節に保温性の良いものといったミスマッチは避け、必要に応じて敷物やカイロ、扇風機などを使うなどの工夫をしていただければと思います。

ピッタリな市販品が見つからない場合は、わんちゃんに合うようにカスタマイズしたり、大型犬の場合はDIYで作られる飼い主さんもよく見かけます。クレートやケージを上手に取り入れてわんちゃんの飼育に役立てていただければと思います。

執筆者プロフィール

田邊 弘子
獣医師(DVM MS)、日本ヒューマン・ドッグウォーキング協会理事

一般企業から動物病院、ドッグフードの通信販売会社勤務を経て、犬の飼育についての理解を深めることを目的とした飼い主向け情報誌の製作などを行う。
<人と暮らす犬が幸せになれるように><犬と暮らす人が幸せになれるように>をモットーに、多くの飼い主へ情報を発信している。
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