マイシッポコラム-愛犬旅を充実させる情報集-

【獣医師執筆】
毛玉クラフトから学ぶ愛犬の被毛ケア

先日ラフォーレリゾート修善寺にて行われたイベント「Halloween Doggycation in Shuzenji」で毛玉クラフト体験のお手伝いをしてきました。デモンストレーション用には、市販の羊毛を使用してハロウィンらしくジャック・オー・ランタンやチャーム、愛犬の顔などを作りました。

毛玉クラフトの作り方

作り方は簡単で、食器用洗剤を少々たらした水に羊毛を浸した後水気を絞り、あとは両手に挟んでお団子を作る要領でひたすら丸めます。羊毛の量や丸めるときの力加減によって差は出ますが、写真のチャーム程度の大きさのものなら、ものの2~3分でふわふわだった羊毛がボール状になります。それに金具を取り付ければチャームの出来上がりです。ジャック・オー・ランタンは少し大きめに作った毛玉を専用の針を使って形を整え、色違いの毛で目と口を付ければ出来上がり!
一度できた毛玉は水で洗ったり、時間が経ったりしてもほぐれることはありませんので、長く楽しむことができます。
デモンストレーションでは、市販の羊毛フェルト用の羊毛を使用しましたが、参加の飼い主さんには事前にブラッシングの際に出た抜け毛を溜めておいてご持参いただき、それを使用してチャーム等を作っていただきました。
ご自分の愛犬の毛でかわいいチャームがアッと言う間に出来て飼い主さんは喜ばれていましたよ。

毛玉は簡単にできてしまう

毛玉は、抜毛だから作れるというものではありません。わんちゃんに生えている状態の毛でも、濡れる、圧がかかる、こすれあう、といったような条件がそろうと簡単に毛玉になってしまいます。
また、毛玉というと、先に作り方を述べたチャームのようなかわいいものを想像しがちですが、何もお手入れせずに放置された犬に出来た毛玉は分厚い毛布状になって皮膚を覆うまでになってしまうことがあります。毛布状になってしまった毛玉は、通気性が悪く湿気が溜まり、犬の体温によって適度な温度が保たれるため細菌のかっこうの住処になってしまいます。毛布状になった毛玉に覆われた皮膚は皮膚炎や感染症を起こしている可能性が高いです。
前述しましたように毛玉は水に溶けたり自然にほぐれることはありませんので、このような毛布状の毛玉が出来てしまったら、バリカン等で毛を刈り、その後の皮膚の治療に長い時間と費用が掛かることになります。何よりそんな状態まで放置してしまうと一番つらいのはわんちゃんです。

日ごろのブラッシングが大切

そんな辛い状態にしないために一番効果的なのは、日々のブラッシングです。ブラッシングをする際、特に丁寧にしていただきたいのが毛玉ができやすい部分です。お尻のように座った時に床に着く部分、四肢の付け根のように動いたときにこすれあう部分、丸まった時内側になるお腹のように蒸れやすい部分などです。ただ、このような毛玉のできやすい部分はわんちゃんが触られたくない場所でもあるのでブラッシングするのが難しいことがあります。
そのような場所をブラッシングする際に、無理やり押さえつけたりするのは当然NGです。また、おとなしくブラッシングさせてくれるわんちゃんでも、ブラシやコームの種類や大きさが適していないと苦痛になりだんだんさせてくれなくなる場合があります。
ネット上の動画などで勉強されるのもひとつの方法ですが、犬種によって適したブラシ等が違ってきますし、わんちゃんの性格によっても対応方法が変わってきますので、わんちゃんの状態をよく理解している動物病院やトリミングサロンでブラッシングの仕方を教えてもらうとよいでしょう。

すでに毛玉が出来ていたら

出来てしまった毛玉は、かなり小さいうちはほぐすこともできなくはありませんが、カットせざるを得ない場合がほとんどです。毛玉のカットの仕方にはいろいろ方法はありますが、ご家庭でカットするのはあまりお勧めしません。適したハサミやコームを準備し正しい方法でカットしないと、皮膚まで切ってしまう等の事故が起きることがあるからです。
毛玉に気づいたら、例え少量であってもまずは動物病院で診てもらうことをお勧めします。
舐めたり齧ったりすることでも毛玉はできます。何か病変があってその部分を気にしてわんちゃんは舐めたり齧ったりしてる場合があります。病気やケガが無いか診てもらい、その後の毛玉の対応についても獣医師の指示に従うとよろしいかと思います。

頭髪だけの人と違って、わんちゃんは体全体を被毛に覆われています。被毛のお手入れはわんちゃんの全身ケアになりますので、ブラッシングと侮らず、毎日丁寧に続けてください。
毛玉は、わんちゃんの体の上にではなく、丁寧にブラッシングした時に集まった抜け毛でわんちゃんの体から離れたところで作るようにしましょうね。

執筆者プロフィール

田邊 弘子
獣医師(DVM MS)、日本ヒューマン・ドッグウォーキング協会理事

一般企業から動物病院、ドッグフードの通信販売会社勤務を経て、犬の飼育についての理解を深めることを目的とした飼い主向け情報誌の製作などを行う。
<人と暮らす犬が幸せになれるように><犬と暮らす人が幸せになれるように>をモットーに、多くの飼い主へ情報を発信している。
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